べっかん

ヤマグチジロウの諸々の別館。

幕開けとM-1グランプリ2018のお話。

 

年の瀬だよホントに。M-1グランプリでしたよホントに。

今回の大会、なんだか"あの頃"のM-1が戻ってきたなという感じがありましたね。

この間書いた*1『酒と話と徳井と芸人』でもトータルテンボスが言っていたような「休止前は緊張感の中でどれだけ笑いが取れるかで、復活後は暖かい空気の中からさらに突出した笑いを取れるかという空気が続いている(要約)」というここ数年の空気とは打って変わって、休止前のような全体的に緊張感が漂う中から這い上がった霜降り明星が優勝という形で幕を下ろしました(もしかしたら大阪勢が多くて前半に集中したのが原因だったりするのかな?)。

 

これまでの文脈で言えばトップから盛り上げて……という流れだったんですが、トップの見取り図も続くスーパーマラドーナかまいたちも完全に持ち味どおりの漫才だと思ったのに思ったように得点が伸びず、なんだか「おや、なんだか例年よりも渋いな」という雰囲気の中ジャルジャルの昨年に続くZAZEN BOYSのような漫才がハネてようやく暖まったかと思えばその後のギャロップゆにばーす、敗者復活から上がってきたミキでさえも波に掴めずに、決勝進出者が発表された当初に「ようやくきたか」とお笑いフリークを頷かせた大阪での実力者をはじめとする正統派が苦しむ展開になってしまって「おいおい今回大丈夫かな」と思うほどでした。

 

その後のトム・ブラウンが独特のネタで爪あとを残すも爆発とはいかずに敗退し、その空気のまま進むかと思われた9番目に霜降り明星が選ばれ「ここでハネなかったら優勝は和牛かな」と思っていたところに最初から最後までたっぷり詰まった漫才でようやく会場が沸きあがります。個人的に2006年の「このままだったらフットボールアワーがまた優勝してしまうぞ」と思っていた時に出てきたチュートリアルを見ているようでした。

そして満を持しての大本命・和牛が安定感のあるネタを披露するも霜降り明星の得点には届かず、ファイナルラウンドもそのままの順位で決したというわけですね。

 

個人的ないろいろで言えば、もともとピンでのフリップネタでそのツッコミワードのセンスをハチャメチャに発揮させてハチャメチャに面白かった霜降り明星粗品がコンビを組んだと知って「なんでそんなことすんじゃ」と思っていたのにここ何年かでせいやがメキメキに力をつけて「せいや粗品のスケッチブックになった瞬間じゃ」と思いましたね。思ったし呟いちゃいましたね。

それにかねてより応援し続けている*2ジャルジャルなんですが、ラストイヤーを最終決戦まで勝ち残り、3位という結果でそのM-1挑戦を終えました。去年の「ピンポンパンゲーム」のネタでもそうだったのですが、同じことをやり続けて単調になりがちなところを4分間の漫才のどの部分でどのボケのカードをきればウケるのかというような戦略性じみたものがことごとく効果的にハマっていて、彼らのセンスの高さを感じました。これまでの大会で苦言を呈されることの多かった中川家礼二からのコメントはぐっとくるものがありました。

ダークホース枠で爪あとを残したトム・ブラウン。決勝に残った時点でお笑い好きの間でざわついたほどですが、重たい空気に飲まれることなくやりきり、審査後のトークでもネタ番組に「幻の2本目のネタ」という触れ込みで呼ばれるであろう興味をひく発言で心を掴んでおり、下馬評からすれば充分過ぎるほどの決勝だったんじゃないでしょうか。

 

そんな感じでいつだかにも書いたかも知れませんがダイノジの大谷がM-1、3年周期説という「3年ごとに大会の傾向が変わる」という持論を語っており*3、その法則で言うならば前年のTHE MANZAIで華丸大吉に次ぐ2位だったトレンディエンジェル休止前から決勝に残り、本格派のしゃべくり漫才に定評のあった銀シャリ歴代最多の準決勝進出回数を誇っているとろサーモンという、休止期間がなければ優勝していたであろう漫才師への救済の3年間からの最年少優勝という、新たな世代に移り変わっていくのかなという幕開けを感じさせる大会でした。

今回多くの実力派がラストイヤーを迎えており、そういった意味でもまた来年誰が新しく出てくるのかが楽しみですね。

 

それでは。

 

*1:この間

colapoly.hatenablog.jp

*2:これとか

colapoly.hatenablog.jpこれの最後のほうとか

colapoly.hatenablog.jp

*3:大阪でネタに定評のあった中川家ますだおかだフットボールアワー。その2人ならではの漫才を磨いてトップにまで上りつめたアンタッチャブルブラックマヨネーズチュートリアル。実力は認められていながらもなかなか表舞台に出てこられなかったもののワンチャンスをものにしたサンドウィッチマンNON STYLEパンクブーブー。そしてM-1を象徴する笑い飯。といった具合。サンドウィッチマンが優勝した時に「これまでの流れで言うならばトータルテンボスが優勝していた」という旨での発言。