べっかん

ヤマグチジロウの諸々の別館。

清算とM-1グランプリ2020のお話。

 

いやあ、参ったね。
もう人生でこんなにも泣き崩れる日が来ようとは。
僕がマヂカルラブリーに入れ込んでるということは過去の記事から見ても明らかなのですが(知らない人はそれだけでも覚えて帰ってくださいね*1 )、そんな自分でさえも思っていた以上にマヂカルラブリーの優勝を喜んでしまいました。本当におめでとうございます。

 

そんな感じなので全体を振り返ろうにも多少そういう大好きバイアスがかかってしまうことにはご容赦いただきたい。
いや、それを抜きにしても今年の大会はシンプルにめちゃくちゃ笑った感じはありますね。

 

まずは前評判から「ほぼ横一線」、「誰が優勝してもおかしくない」みたいな話は内外から聞こえてきていて、そういう点で見ればやっぱりその通り会場の温まってきた4、5、6番手がごっそりそのままファイナルに残るという分かりやすい大会になりましたね。

 

しかしその内容は波乱波乱で、史上初のトップバッター敗者復活枠。しかも上がってきたのはあのお調子者でハイテンポのインディアンス
「これは荒れるぞ」と思うと同時に「もしかしたら会場の空気ができあがるのが早まるかな」とも思えました。
ネタは敗者復活戦及び2年前くらいからやっていたネタではあったんですが、真っ白になったという去年に比べてかなりのびのびと、アドリブもちょこちょこ挟む余裕まで感じられて、去年からの反省点・雪辱とやり慣れたネタというのが相まってとてもいい仕上がりになっていたと思います。
しかし、敗者復活枠+あのインディアンスということ、さらにトップに敗者復活がきてしまったことで一組目のネタまでが例年よりもさらに長くなってしまい、結果として擬似前説みたいな立ち位置になってしまったのは否めませんね。これもやっぱり順番だから仕方ないのですがね。

 

そして二組目は東京ホテイソン。上記の通りなので実質トップバッターみたいになってしまい変わり種なコンビということもあって点数もあまり伸びなかったのかと。
さらに東京ホテイソンはあのツッコミを活かしたネタで毎年準決勝までは行くものの……というコンビでして、それが去年あたりから一度「?」と思わせるボケに小気味よい不思議なワード乗せたあのツッコミで掬い上げるという発展系の漫才を生み出してようやく決勝まで上り詰めたという、長年その過程を見てきた人からすれば大ウケ間違いなしなのですが決勝、そしてネタを知らない審査員からすればいきなりの応用編は少し分かり辛かったのかなと。
でも審査員である事務所の先輩サンドウィッチマン富澤のかけた言葉通りだと思いますね。あの一発で終わらずにここまで進化させてきたのはすごいことだしまだまだ伸びしろも残しているので今後に期待です。若いし。

 

三組目がニューヨーク。今年もまた序盤かぁといったところだったのですが、嶋佐のヤバそうな風貌と喋りに合ったスレスレのボケを屋敷が気持ちいい所に的確にツッコむのはニューヨークらしいいい漫才だったと思います。
点数も先の二組に差をつけた1位で「もしかしたらこのまま……?」と思ってはいたのですがここからポンポンポーンと飛び越えられていきます。

 

ポンポンポーンの四組目、見取り図。安定の3年連続。序盤で噛んでしまったリカバリーなど、巧さでいえば今大会随一だったのではないでしょうか。それでいて「車ないん?」で細かい違和感を拾ったり「無意識で〜」の伏線回収と、構成もピカイチでした。

 

次のポンの五組目、おいでやすこが。史上初の即席ユニットコンビでの決勝進出。さらに二人とも大会予選中に突然ピン芸人としての退路を絶たれるという話題性だけでも面白かったのですが、それぞれのピンネタのスタイルを踏襲した言ってみれば思っていた通りのネタが思っていた以上にバッチリはまっていて見取り図も捲る1位。結局このままトップでファイナルに進出するのも納得するほどの爆発力でした。

 

ポーンの六組目、マヂカルラブリー。紹介VTRの時点でほぼ前フリみたいな感じになってましたね。そして土下座ポーズでせり上がってくるという本人曰く史上最速のボケ。そして終盤尻すぼみになるも笑いの瞬間最大風速では一番だったところが因縁のえみちゃんにも評価されて2位に食い込みました。
これもインディアンスと同じく2年ほど前からやっていたネタで、正直やってることはそんなに変わってなかったものの、観客や審査員のほうが昨今の野田クリスタルを知ってしまったせいで瞬間最大風速を生み出したのだろうと。そう考えると上沼恵美子との一件と今回の返り咲き、野田ゲー旋風やR-1優勝でこつこつ積み上げた知名度が一気に吹かせた風だったのかなとさえ思えますね。すごかったもんね最初のボケ。シェフを探すくだりを笑い待ちするほどに大ウケ。あの一発のボケだけで何点積み上げたんだろう。

 

 

ポーンといった後の七組目、オズワルド。結果として2年連続で優勝コンビの後ろというしんどい役回りを務めることになってしまったものの、らしさは健在。ツッコミが周りに引っ張られて大きくなってしまったという意見もありましたが、予選とかを見るにそれなりに意識的にやってたんじゃないですかね。確かに「……逆に?」みたいなトーンはめっちゃ好きですが。
まあそれほどに今回の大会の縦軸が大声になっていたということでしょう。

 

八組目、アキナ。なんだか会場と上手くがっちりハマらなかった感が否めませんね。序盤の「好きなん?」のあたりはアキナ独特の雰囲気だったのに後半焦ったのかそれとも大会の空気に引っ張られたのか大声混じりになってました。
かなりパンチの強い剛の笑いが前半中盤に集中したのでこのアキナからの3組の頃には観客も疲れ気味だったのかも知れないですね。

 

九組目、錦鯉。いろいろとワチャワチャしちゃいましたかね。前評判では「一周回って優勝」なんて噂もありましたが、やっぱりこの順番でさんざん出てきたパワー系はしんどかったのだろうか。あ、僕は一回目のレーズンパン聞き取れましたよ?

 

十組目、ウエストランド。こちらも東京ホテイソンと同じく準決勝までは行くのに……というところからようやくの初出場でしたね。ネタはこれまで通りの題材、展開にプラスして「えっ? 復讐だよ?」のくだりのようなコミカルな動きでポップさが生まれていたのが活きたのでしょうか。

 

そして見取り図、マヂカルラブリー、おいでやすこがの3組でのファイナルステージ。
安定した見取り図、輪をかけて暴れまくって1個目よりもウケたように感じたマヂカルラブリー、1個目からは少し落ちるのかなといったおいでやすこがのネタでしたが、結果は2、3、2でマヂカルラブリーが優勝。「これは割れるなぁ」とは思っていたが、史上初めて全員に複数票入る結果になりましたね。
ちなみに僕はマヂカルラブリーが3票入った時点で座ってられずに立ち上がり、優勝が確定時点で立ってられなくて文字通り泣き崩れていました。
巨人師匠は見取り図だろうな〜とは予想していたので正直難しいのかなとは思ってましたがまさかのね。逆に見取り図みたいな本格派はファーストラウンドからのぶっちぎりでないと優勝は難しいのですかね。

 

とまあデビュー当時からのスタイルを一切変えずにスキルだけを磨いたコンビの優勝が続きましたね。そういう流れになってきたのかなと。それまでが休止機関の救済とするならば第二の波がきた感じがします。
それに加えてマヂカルラブリー上沼恵美子との一件、R-1の優勝というストーリーなどを組み合わせての優勝。
そういう過去の因縁、その時の10位という順位、大きくいえば2020年という年を一気に清算したかのような瞬間を見せてもらえた気がします。

 

それでは。

 

*1:短期間に3回地上波に出たというだけで騒いだ記事。なんでも決勝の翌日は1日だけで10本仕事が入ったらしいですね。感慨深い……。

colapoly.hatenablog.jp

前回M-1に出場した時の記事。それだけでも非常に浮かれているのが分かる。

colapoly.hatenablog.jp

野田クリスタルがR-1で優勝した時の記事。非常に興奮しているのが分かる。

colapoly.hatenablog.jp

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