べっかん

ヤマグチジロウの諸々の別館。

青春とスケッチブックのお話。

 

17年。そんな長い年月を共に過ごした漫画が今年の9月、終わった。

その漫画とは『スケッチブック』。コミックブレイドやらなんやらで連載されていた、なんやら出張版やら移籍やらがあったらしいがコミックス派の僕にはよく分からない、とにかく連載されていた美術部4コマ作品だ。

 
スケッチブック 14巻 (ブレイドコミックス)

いつか*1のオススメ漫画でも取り上げたこともあるけども、改めて説明すると福岡のとある学校の美術部を舞台にゆるっとした4コマ漫画だが、今読み返してみると6話の時点でまったく美術関連の話が出てこないチャプターがあるほどに美術部とは名ばかりのほんとにゆるっとした漫画である。

いつかのオススメの時にも言ったことだけど、13巻なんかは8割方虫や動物のややこしい豆知識的なネタが急増したりと、とにかく作者のやりたい放題を感じる内容だったが、かえってそれが独自性を尖らせていたようで新刊が出るたびになんだかほっこりする作品だったことは間違いない。つまりは大好きだってことですよ。

 

内容もさることながら、大好き過ぎてこの作品に出会った時のことも鮮明に覚えている。

この『スケッチブック』の第1巻がちょうど発売された頃、近所にあった本屋さんも無くなってしまったので自宅から3キロほど離れたところまで漫画を買いにいく日常を送っていた。

その日はなぜか「今日は漫画を買わなきゃいけない気がする」と強く感じた僕は、部活を早引けしてまでその本屋へ向かった。自転車に乗ってえっちらおっちらと。

そんな強く感じた想いに反して、新刊コーナーを覗いても当時読んでいた漫画の新刊はひとつも無く、なんだか肩透かしをくらった気分になり「せっかくここまで来たのに手ぶらでは帰れない」という謎の使命感で、吟味に吟味を重ねて手に取った3冊の新刊本。そのひとつがこの『スケッチブック』だったというわけだ。

 

印象に残る作品だったとはいえなぜそんなに鮮明に覚えているのかというと、その時手に取った3冊が『スクールランブル』、『クラブクライム』、そしてこの『スケッチブック』という、家に帰って読んでみると3作品全てが個人的に大当たりで自分の嗅覚と、1巻のいわゆるジャケ買いの楽しさを強く感じたいわば歴史的な日だったからである。

なので好き過ぎて覚えてるというよりも、覚えているからこそいっそう思い入れがあるフシさえあるかも知れない。

なんなら、部活を早引けした時に「用事があるので帰ります」と部長に告げた時の部長の顔さえも覚えている。それほどの歴史的一日だったのよ。

 

そして改めて意識して読み返してみると、自分がかなり影響を受けていることも感じる。

現在、不本意ながら描いているハトの4コマなんかの、日常に起こった「あ~あるよね、こういうこと」って感じの小さな出来事の落としこみ方が振り返ってみれば完全に『スケッチブック』の影響である。全っ然意識してなかったけど、面白いほどに同じようなことをやっていた。

あずまんが大王』とか『少年アシベ』とか、僕の4コマ原風景と言えるような作品も試しに軽く読み返してみたけど、4コマを描くにあたって一番色濃く影響を受けているのはもしかしたらこの『スケッチブック』なのかも知れない。そう考えるとなかなか壮大になってきたぞ。

 

よくよく思い返すとその他の2つの4コマ作品は、読み始めた頃には既に完結していたのでどちらも短い期間で一気に読みきったのに対して『スケッチブック』は、歴史的一日のあの日から完結してしまった今年までゆっくりゆっくりと摂取していたのでじんわりと身体に馴染んでいったのかも知れない。「マックはおいしいけど、やっぱりカーチャンのみそ汁が一番だな」みたいな。

そうそう、そのゆっくりっていうのもなかなか味があって、発刊ペースが2年近く空く時もあれば半年ほどで出てきたり、出張版と併せて2冊同時に出てきたりもして「忘れかけてた頃にふっとやってくる感じ」さえもなんだか心地いいという作品は、もしかしたらこの作品だけかも知れないですね。

 

そんなこんなで、記事の構成を頭の中で組み立てていた時は出会いのエピソードしか無く「エピソードが弱いんじゃないか」と書き始めるが億劫だったにも関わらず書いてみればいろいろと吹き出してくるもので、なんかそういうの多い気がする。

他にも福岡が舞台ということで福岡弁をいろいろ知っているのもこの作品のお陰だし、やっぱりいろんなところで身体に染み込んだ作品だということですね。生き物の豆知識だけはややこしすぎて全然頭に入ってこなかったけどね。

そうそう、2007年に『スケッチブック~full colors~』というタイトルでアニメ化されていて、個人的に珍しくDVDを全巻揃えているアニメです。

 

とまあそんな感じで、学生時代からずっと集めている作品というものも無くなってしまって僕の青春も終わってしま……

おっお前は……『よつばと!』!!!

こっちには『夜桜四重奏』! 『ジャイアントキリング』! 『宇宙兄弟』まで!!

いやぁ、これは青春、まだ終わらねえっすわ。

 

それでは。